ハトの五線譜

近隣公園への散歩の道すがら、「ホウホウ」と野バトの声が聞こえる。昨夜、雨が降ったせいか、空気がすがすがしい。晴れた空には秋の少しくずれた入道雲の姿が見られる。いつもは子供たちでにぎやかな公園も日曜日の朝八時前では人影がなく、静けさに満ちている。リードを長めに延ばしてやると、さっそくハルは芝生と雑草の入り混じった土の周りを駆け巡り始めた。低い朝日に照らされた手前の樹影が長く地面に伸びた先には、大きなイチョウの木にびっしり詰まって色好き始めた葉々が大きな風に「ザアー」と音を立てながらゆっくり左右にそよいでいる。合唱のようでもある。公園のわきを走る電線には、野バトが十数羽とまっていた。よく見ると互いに間隔を適当に空け、いくつかの電線にまたいでとまり、まるで五線譜のようである。時々羽を広げて強弱を変えたり、次のハトと入れ替わって音楽を奏でるようである。ちなみに「ミー・ミ・ミミ・ソー・ミ・ミ・ミ」と。いつもは障害物にしか見えない電線も少し愛らしく思えた。

翌週の日曜日の朝も上天気だった。道すがらに聞くハトとカラスの声は気持ちが良いのか一段と音声が高い。少しカラスの方が多いか。公園の雑草の葉に朝露がのっかっているそばをハルが喜んでかぎまわっている。人の姿が見えない公園に、赤いコートを着てつえを片手に老女がやってきた。お互いに軽く挨拶を交わした後に、彼女はベンチに腰かけて、袋を取り出した。と、同時にハトが十数羽集まりだした。多分餌をあげているのだろう。しかし、今日はカラスが混じっている。老女はいそいそと立ち上がった。誰もいないベンチのそばでカラスの集団が餌をついばみはじめた。ハトは周囲から遠巻きにしているだけである。カラスはハトが近づくと羽を広げて追い払っている。鳥の数に圧倒されたせいか、ハルは地面に座り込んで様子をうかがったまま動かない。しばらくすると、カラスたちは満腹になったのか飛び立ったので、ハトがベンチの廻りに近づいてきた。まるで、アフリカのサファリの光景のミニ版を見るようだ。カラスはといえば、数羽電線にリズムのない符号のようにとまっていた。

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