気持

夕刻の散歩、いつもの六つ角に出てきた。歩道信号がパチパチし始めたので、ハルを連れて通りを渡ろうとすると、ハルがしきりにリードを引っ張る。ハルがまじまじとこちらを見ている。「どうしたの、そっちに行きたいの?」、「じゃ、今日はそちらにしようか」と返事をして次の青信号を待つことにした。角には交番もあり、幾人かの人達がスマホを片手に立っている。「この辺で帰りましょうか」、「そうですね」。後ろで声が聞こえたので振り返ると、杖をついた品の良い老婦人が介護士らしき若い男性とやはり信号が変わるのを待っていた。多分、近くのあの高齢者ケアマンションの住人なのだろうか。声の質からしてまだもう少し散歩をしたいのであろうか。彼女がハルの姿を眺めて「きれいですね」と、声をかけてくれた。「ありがとう」と笑顔で返事を返した。ハルはきちんと信号を守って待っている。やがて、信号が変わり、ハルと歩き出した。その後の二人の姿はわからない。高齢者がますますふえてきている。高齢者と世話をする人の役目もむずかしいなと思うひと時であった。

その後、ハルと久しぶりにハルをいつも可愛がってくれていたカフェにやってきた。「ハルちゃん、いらっしゃい、久しぶりね」と手を振って迎えてくれた。さっそく相手に背を向けお座りをして撫でてもらっている。スタッフの方が仕事に戻り、一杯飲んでいる自分の傍らで周囲の景色をながめていたハルだが、薄暗くなってくると「クーン、クーン」とすり寄ってきた。飽きて、もう帰ろうと言っているのか、こちらは言葉では表せない気持ちなのかも。

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