幸せもの

僕は幸せ者である。といっても、建物の話ではあるが、ハルと散歩するコースには、数点のわが作品が建てられている。いずれも、毎朝・夕、ちょっと回り道をすれば目にする位置にある。これといって特別の感情はない。わが子供たちと一緒で、そこに存在すること自体が普通であるからかもしれない。ここは苦労したな、あそこをこうやっておけば、と思うこともあまりない。その都度、真剣にプロジェクトに取り組んでやったものだ。その中の一つ、K電力の社員寮は、特別に思い出深い。設計当時、外部に開いた建物をイメージして通風を感じるバルコニーを作りたいと思い、穴あきブロックの案に鉛筆を幾度も走らせ、沖縄に何度も通った(当時から、経済的に成り立たない建築材料は本土ではもはやあまり作られていなかった)ことや、コンクリート製の手摺柱の太さの施工で現場の所長さんと討論を重ねたことなど、散歩の通りすがりに思い出す。その後、この所長さんとは、つい最近まで互いの交流が続いたものだ。

三十年前、竣工時に植えたヤマモモの木は徐々に大きくなり建物のファサードを覆うまでに成長した。ふさふさと濃い常緑の葉を茂らせ、時の経過とともに建物と調和し一体感をなすようになったようだ。ただ、反省点もある。植物は夜露が当たらないところでは育たないことだ。ピロティ下の花壇に植えたツタは成長せず、とうとう枯れてしまった。もう一つ、半公共的な企業の施設として、住居ではあったが塀を取り除き、道路に面した場所にコミュニティ用にとベンチを設置したのだが、浮浪者が横になるかもという理由で数年後取り払われてしまった。今となっては、近隣の高齢者や幼児のための格好の場所だと思うのだが、時代を少し早く先取りしすぎたかな。

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