町中の時折ハルと立ち寄っていたカフェに、およそ一年ぶりに行ってみた。ハルは果たして覚えているだろうか。テラス席の椅子に腰かけるとすぐにしゃがみこんだ。顔見知りの店のスタッフさんが近寄ってくると、ハルは中腰で尻尾を振り振り、さっそく背中を後ろに向け、さすってもらう姿勢をとった。かわいがってもらったのをちゃんと覚えているのだ。犬の記憶力はどの程度あるのだろうか。ハルがまだ一才の時、三か月近くフランス行きで我が家を留守にしていたヨメサンが戻ってきたとき、飛びつくようにはねて喜んでいたハルの姿を思い出す。二~三才の遊び盛りの頃、近隣の休日の広い駐車場で犬仲間の飼い主さんたちと自然に集まり、当時若いハルたちが思いっきり駆けずり回っていた思い出が今でも残っているのだろうか、散歩道で再会するとお互い仲良く鼻をかぎあっている。お互い年を取ってきているせいかあまり飛び跳ねはしないのだが。中には、会ってもフンと素知らぬ顔を互いに見せる犬同志もいる。移り気の中年なのかな?
ハルにとっては苦い思い出もあるのか、まだ幼いトイプードルとじゃれあって馬乗りになれそうになり、その時引っかかれそうになった記憶があるのだろう。僕には今でも数多いるトイ・プードルの違いも定かではないのだが、ハルはいまだにそのワンちゃんと出会うとリードを引っ張り遠回りを要求するなど、飼い主たちのほほえみを誘っている。どこでどうやって、好き嫌いの区別を付けたりしているのかよくはわからないが、人間といっしょでどこかで相性の区別をしているのであろう。
