ハルが入れてもらえるレストランは今のところ一つである。ヨメサンが週一~二回、ハルの散歩がてらに通う洋風の居酒屋がそれだ。最近は、外部にテラスのある飲食店などで犬連れでもOKのところが出てきて僕の定例の散歩コースにも織り込まれているのだが、店の内部に堂々と入れるのはここだけである。これもヨメサンの交渉術であろうか、店の方のご厚意であろうか、うれしいことだ。僕はこの店には一緒にたまにしか寄らないのであるが。ハルは店の中でお客の皆さんが会話しているそばで一~二時間の間、おとなしく床やベンチ椅子にもたれてしゃがみこんでいる。確かに、年期の入ったコンクリートの床の上は夏冬ともに過ごしやすいようだ。店の常連客もハルをかわいがってくれるので、居場所を見つけているのかもしれない。店の主人が他の客に「犬により、OKを出しているのですよ」というのもうなずける。
僕と一緒にテラスレストランに寄った時などは、二十~三十分も経てばすり寄ってきて「帰ろう」などと言い出すのだが。外の風景を観察するのを好いているハルではあるが、ここではじっとベンチ椅子に反対向きに足をかけて、外の通りを眺めて過ごしている。ヨメサンによると、ハルは明るい方を眺めるのが好きとのこと。確かに、ハルの視界の先の車や人の行きかう居酒屋の前の通りは、午後の陽射しが対向の建物に反射して明るく輝いている。そういえば、日頃の我が家の中でのハルも朝は東南向きの食堂、午後からは北西向きの居間やバルコニーに好んでいるようだ。これも自然の太陽の恩恵であろうか。
