ハルが我が家へ来てから九年。ハルを含め子供たちも皆大人になった。子供が生まれる前や小さい時に犬を飼うと、子供の成育上役に立つとはよく言われるが、ハルと付き合っているとつくづくそれがわかる気がする。
ハルは家族の一員である。普段の昼は僕とヨメサンの大人二人だけなので、ハルはいずれかといつも一緒にいる。僕はアトリエで過ごす時間が多いので、どちらかというと食堂や居間でヨメサンと過ごす時間が多いハルだ。別にかまってやらなくても、ハルの視界の届く範囲で安心してゆったりと寝転がっている。でも、ハルがべったりくっついて寝そべっているとき上がっていくと、すくっと顔を持ち上げ何もないよという顔つきをする。
それが朝や夕方の散歩の前になると、体内時計が知らせるのかむっくり起き上がり背伸びをして、玄関口へ降りる階段のところでうずくまって待っている。待ちきれないときは階下のアトリエまで降りてくる。散歩の時間の催促だ。その時間帯ではなくても、ヨメサンが出かける支度を始めると、自分も一緒に行こうとしているのか、くっついて歩き回っている。そして自分が留守番役だと分かれば、必ず僕のところへ来るのだ。
夜、上の娘が仕事から帰宅すると、それからは彼女の番だ。食卓の娘の膝の上にちょこんと乗り、しばらく動かない。今度は僕と目を合わせても、つんと澄まして動じない。家に出たり入ったりする下の娘にはちょっと遠慮がちか、気が弱そうにふるまっている。
たまに皆が食堂に集まった時など、みんなに公平に接しようとしているのか、少し離れたところできちんとおすわりをして、自分に声がかかるのを待っている。「おいで」と呼ぶと、尻尾を振りながらみんなの周りをくるくる回ってさすってもらっている。なにしろ、甘えん坊で気配り役のハルでもある。
